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氷の歴史

ウイスキー人気がすっかり定着した昨今、お客さんからやたらと「おすすめの飲み方は?」と聞かれるようになりました。あのですね、

昔々は氷は天然のものを寒い地域から木箱におが屑で包んで馬で運んでおり、特権階級しか手に入らないセレブのためのものでした。労力を考えれば相当な貴重品であったというのは想像しやすいと思います。1853年のペリー来航を機に開国が行われた当時、アメリカのボストンから船で半年掛けて運ばれたボストン氷はみかん箱ぐらいの大きさで3両~5両(現在の価格で30万円~60万円ほど)だったそうです。60万円の氷、買いますか?普通の庶民には買えないですよね。

1800年前後から欧米で機械式製氷技術が研究が盛んになります。日本においては米国人のアルバート・ウォートルスが横浜の山手に日本初の機械製氷会社「ジャパン・アイス・カンパニー」を設立したのが1879年。当時はまだまだ高価だったでしょうが、ようやく庶民でも氷が手に入るようになりました。それ以降、天然氷と人口氷の販売競争が盛んになりましたが、「人口氷は体に悪い」という悪評が広まり販売に苦戦したそうです。一部の頭の悪い人による風評被害って今でも変わんないですね。

それでもまだ氷は買うものであって贅沢品です。今のように当たり前に身近にあるものになったのは一般家庭で冷蔵庫が普及した1960年代です。といはいえ、冷蔵庫は今の物価に直すと約50万円ほどの高額家電だったのでまだまだ庶民には高根の花でした。

 

かたや酒というものは、

・ワインは、ブドウは自然に発酵するので発明というより発見したのが最初だったと言われています。紀元前7000~5000年の頃には意図して造られるようになったと言われます。古過ぎて想像の域を超えません

・ビールは諸説あり紀元前8000~4000年と言われています。古過ぎて想像の域を超えません

・スコッチウイスキーが最初に文献に登場したのは1494年。12世紀ごろにはすでに存在したとされている

・ジンは11世紀頃にイタリアの修道士がジュニパーベリーを主体にしたスピリッツを製造していたとの説がある他、ヨーロッパ各地で古くから造られていた

・ウオツカはモスクワ公国(1283~1547)の記録に登場

・ラムは16~17世紀にスペイン人かイギリス人が造ったとの説が有力

テキーラ18世紀半ばの火事をきっかけに造られた

つまり酒が最初に造られた時代は氷なんて手に入らなかったので、歴史のある伝統的な全ての酒は氷を入れることなんて想定しておらず、そのまま飲むことを前提として造られているのです。もっとも今では日本発祥のウイスキーハイボールはアジア圏を中心に人気が広がっているし、ホワイトスピリッツは冷凍庫でキンキンに冷やしておくのが当たり前になっています。時代と共に酒の飲み方・扱い方は変化しています。

そのまま飲むのが本来の飲み方ということを理解・経験したうえで、氷を入れたり水で割ったりソーダで割ったりは飲む人の好みで自由です。好みの問題なので他人であるわしゃ知らんがなという話です。んなもん、店で聞かなくても家で1回やってみりゃエエがな、と思うのですが不思議となかなか誰もやらない。コンビニで小っちゃい瓶のウイスキーと炭酸を買ってくれば、氷なんていまやどこの家でもあるでしょ?

ウイスキーは、氷を入れれば香りが立ち上がってこなくなるし、何かで割れば薄まるというのは当然ですが、皆さんなかなか当たり前が分かっていない。氷を入れれば立ち上がる香りが死ぬので飲んだ後のバックの香りしか感じられないわけですから違いが分かりずらくて当然です。おすすめの飲み方というよりも大半の人は好みの飲み方が決まったら、ずっと同じ飲み方で飲みます。このウイスキーはストレートで、こっちのウイスキーハイボールで、という人はかなり珍しい人です。まずは家で一度試してみてください。

 

参考資料

こちらもおまけで。ご興味ある方は読んでください。

ただしこれ、研究してるのアメリカの大学なので。氷じゃなくて常温の水を入れるのがスコットランド流であり正解。まあアメリカなんて紅茶に塩とレモンを入れろとか言い出す国ですから。

真正面から争うイギリスもイギリスですが。こういう争いは平和でいいですね。