岡山 BAR SEVENじゃがな

岡山でバーやってます

チェーン店も様々ですねという話

 かのフランスの美食家、ブリア=サヴァランは「料理人にはなれるが、肉焼き師は生まれつきの才能である」と言ったそうです。

突然何かと言いますと、先日、近所の最近出来た鰻専門店に初めて行ったんです。鰻一匹の特上ひつまぶしが3200円と、今どきの鰻にしては安い。チェーン展開しているからこそなせる低価格かと思って期待して店に行きました。

入店すると目の前には券売機が…。カウンター席の前には間仕切りがあり厨房は全く見えません。嫌な予感がして引き返そうかと思ったのですが、一度食べてみないことには意見は言えないので覚悟して食べてみることにしました。「水はセルフでお願いします」と言われて席について周囲を見回すと内装はちゃっちいし、視界の至る所に店のこだわりや、テイクアウトメニュー、口コミのお願いなどのセンスの無いポップが並んでいる。嫌な予感は増すばかり。3200円も払う価値はあるんだろうか…。

肝心の鰻は関東風とはいえパリ感ゼロで炭の香りもしない。建物の外でも炭焼きの香りしないし。後日調べると、この店は高知のうなたんグループのフランチャイズ店だそうで、アルバイトでもボタン一つで失敗無く鰻が調理できるハイテクマシーンが売りだそうな。おそらく捌いて下焼きは工場かセントラルキッチンで行っていて、店では真空パックで送られてきた鰻を機械で温め直しているだけだと思う。
未経験でもOKだそう。

正直な感想はスーパーで買った鰻を上手に焼いたほうが美味いんじゃないか。どうせ鰻を食べるなら、岡山市内なら予算をいくらか足して「くりはら」のうな丼か「うおじま」のひつまぶしをおすすめします。

ということで後日、スーパーで鰻買ってきて庭で焼きました。
皮目が焦げすぎたけどこっちのほうが断然美味いわ。

ブリア=サヴァランの言葉どころか、肉よりも鰻を温度ムラのある直火炭焼きで上手に焼くほうが難しいと思います。昔から「串うち3年、裂き8年、焼き一生」なんて言葉もありますし。職人の育成やチェーン店としての安定感を考慮すると、炭焼き鰻のチェーン展開はまず不可能だと思います。チェーン店だと真空パックを温めなおすのがせいぜいかと。

これは出来ん。

また別の日には近所のとんかつ専門店「ふく徳」に行ってきました。かもがた茶屋などを運営する岡山で老舗の飲食グループのケイコーポレーションの店舗です。場所はここ数年、一蘭資さんうどん、ゆず庵、木曾路などが進出している児島線沿いのフードビジネス激熱エリアです。結論から言うと美味しかった。東京や大阪の有名店で見るような、しっとり柔らかい中心が奇麗なピンク色の極厚のヒレカツやランプ牛カツが食べられます。大都市の有名店みたいに大行列に並ばなくても美味しい極厚とんかつがフラッと行って気軽に食べられるのが凄い。チェーン店ならではの安心感とお得感があるので誰にでもおすすめできる店です。

ピンクの極厚ヒレカツは食中毒を起こさないように低温調理で中心まで熱を通す下処理が重要なので、大きなヒレやランプの肉塊の処理を個人店でやろうとするとなかなか大変です。店が大きいだけに業務用フライヤーも大型のハイグレード品が使われていて、小規模個人店で使うようなの小さなフライヤーよりも食材を入れた時に油の温度が下がりにくくカラリと揚がります。メインをフライに限定することにより、豚、牛、鶏に海老と食材は変われどおおまかな作業工程は一緒です。毎日大量のフライを揚げて料理人の熟練度も高くなります。メインが変わっても、ご飯に味噌汁に小鉢など付け合わせは同じなので、提供は器に乗せるだけ。揚げ方以外のサポートはバイトでも出来るので、店舗のオペレーションも組みやすい。

業態としても、とんかつは人気料理だし、かと言ってスーパーの総菜とは次元の違うものを提供することによって単価もそこそこ取れるし、非常に上手いところを突いています。キチンと人材を育てて、ちゃんと調理をしているので競合が表れるのもなかなか難しい。松のやのとんかつぐらいならバイトでも出来るんですけどね。出店場所も周辺に建築関係の企業が多いエリアでハイカロリーな料理が好まれます。内装も質感よく丁寧に清掃もされていて、色々と感心の一言でした。

ケイコーポレーションって店舗寿命が長い店が多いです。広げ過ぎない出店計画が肝らしい。どの店も規模を生かした料理と価格で顧客足度は高い。次は牛タン専門店にも行ってみようかなと思っています。

3月は博多の名店やまや監修のもつ鍋が食べられるということで20数年ぶりにガストに行ってきました。
日曜日の昼だったのでファミリーで満席で、まさにファミレスの正しい姿で雰囲気はなんだかイイ感じ。猫顔の配膳ロボットが可愛かった。しかしアイツ役に立ってんの?もつ鍋は見事にファミレス味に集約されていることに驚きました。全方位でTHE 普通。
ファミレスって起源はアメリカのダイナーで、時間と共に日本にローカライズされた形態なんですね。ダイナー感の雰囲気が懐かしかった。ファミレスには人生で10回ほどしか行ったことないですが。

3月は娘と二人で近所にある県内でカフェとラーメンを展開している某グループの店にも行ってみました。娘の感想はイマイチで特筆することは無いのですが、テイクアウトのNemoバーガーは非常におススメです。店で食べると至って普通のハンバーグがバンズに挟まると大変身。美味しいじゃないか。それでいて驚異の270円。個人店でマックと争おうとしているのか?原価を計算するとイカれた価格設定です。店内で食べると皿に載ってフライドポテトが付くだけで値段が爆上がりするので注意。

チェーン店とひとことに言っても、とにかく安さが売りで薄利多売で展開している場合もあれば(ほとんどはコレ)、規模を上手く生かして満足度の高い商品を提供している場合もあります。事前にしっかりバックボーンを調べてから行ったほうが良いと感じた春でした。


【おまけ】
最近食べた美味いものだと、宇野の無添茶坊のルーロー飯が美味かったです。スゲぇ台湾しています。豚の香りで脳みそが台北の夜市にトリップしました。苦手な人もいるかもしれませんがアジア旅行好きならぜひ。深山公園の道の駅でも買えるみたいです。そろそろ花の季節なので深山イギリス庭園に行ったついでにどうぞ。