味覚には4+1の種類があります。
◎ 甘味……エネルギー源のシグナル
◎ 塩味……ミネラルのシグナル
◎ 酸味……腐ったものや未熟なもののシグナル
◎ 苦味……毒のシグナル
◎ うま味……タンパク質のシグナル
現代人は味覚をほぼ美味しいものを食べたり飲んだりすることに使いますが、そもそも味覚は生存するための感覚器です。石器時代とか保存技術も無く食料を探すのが大変な時代に「これは食べられる物か、食べられない物か」という判断は生死を分けるわけです。今どきは消費期限が切れたら即廃棄という人もいるようですが、僕の祖母は消費期限など一切確認することなく己の感覚のみでこの牛乳はまだ飲めるかを判断していました。石器時代と同じですね。
余談ですが生き物は家畜化すると白くなるそうです。より人間に可愛がってもらうためなのだとか。これも生存のための手段なんですね。
糖質はストレートにエネルギーなので素直に美味しいですよね。塩に含まれるナトリウムは必須ミネラルですからやはり美味しい。生存確率を高めるために神様はこれらの味覚を美味しく感じるように人間をデザインしたんでしょう。世界が発展してこれらが簡単に手に入れられる現代では過剰摂取が問題になっています。
酸味と苦味は腐敗や毒のシグナルなので拒否反応をしめすのは本能的に自然な反応です。この二つは今回のタイトルの後天的味覚に大きく関わってきます。うま味は話が長くなるので今回は省略。
後天的味覚は英語でAcquired Tasteと言います。直訳すると取得した味覚という意味にになります。何回か口にしているうちに美味しいと感じるようになるということです。アンチョビやブルーチーズ、ビールなどを思い浮かべていただくと分かりやすいと思います。ビール以外にもウイスキーやジン、アブサン、ビター系リキュールなど、甘いカクテル以外のお酒なんてものはその際たるものですね。カクテルが生まれたのは、アルコール度数を下げるのと、あまり後天的味覚の発達していない人でも飲みやすくするため、というのが理由です。
後天的味覚の発達には色々な要因があります。まず重要なのは幼少期の家庭の食事です。親が出したもの、嫌いなものの食べさせ方など、子供の時の食卓はその後の食に大きな影響を与えます。チェンソーマンのサムライソードもアニメ版エピソード8で同じことを言っていました。「幼少期に同じような味のものしか食べてないと大人になって馬鹿舌になるらしい」
大人になってからは味覚だけでなく他の外的要因にもかなり影響されます。大好きな恋人と素敵なレストランで食べたアンチョビのピザが美味しかったとか、重要な仕事をやり遂げてチームの皆で乾杯したビールが美味しかったなど、感情や経験に紐づけられることが大きな要因になったりします。まさに五感で味わうですね。
しかし、そもそもあまり食に興味が無いと自分の好きなものしか食べなかったりするので後天的味覚が発達しません。あとバーテンダーやっていて気付いたのは時間に余裕が無い人は駄目ですね。限られた昼休みにただエネルギーを補給するだけとか、仕事が終わっても仕事の話をしながら飲み食いしていることが多いとか、食の世界がいっこうに広がりません。僕は食事の時は目の前の料理の話をします。誰だったかグルメ系ライターの人も同じこと言ってました。知的好奇心の余裕、時間の余裕、辛辣ですが経済的余裕もグルメ遊びには必要です。
後天的味覚の育成には遅すぎるということはありません。大人になってからでもちょっとだけ意識を変えるだけで育てることが出来ます。例えばラフロイグを初めて飲んで「ちょっと癖があって苦手かも」と感じても、世界中で愛されている大人気のウイスキーなわけですから人気の理由が理解できるまで何回か飲んでみる、みたいなことをやっていけば良いのです。ウイスキーはアルコール度数の高さも相まってなかなかハードルが高いので、パクチーやナンプラーとかから始めてみてはいかがでしょうか。
最近、カクテルや○○サワーなど、甘い酒を飲む大人が増えたなぁと感じるので記事にしてみました。
今回参考にした記事の一つ。子育て中の方には特におすすめです。