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ARDBEG Traigh Bhan #1

 先日、アードベッグの記事を書いた後に酒屋に行ったもんで、つい買ってしまいました。ちょうど熟成の長いアードベッグが欲しかったもので。
Ardbeg 19y.o. Traigh Bhan #1
アードベッグ 19年 トリー バン。2019年発売のバッチ1です。トリー バンはポートエレンの町の西にある砂浜で鳴き砂の浜だそうです。

公式テイスティングコメントでスモークパイナップルと書いてます。まさにそれ。パイナップルのような甘い良い香りが魅力的。ボディーはアードベッグらしくライトで、余韻はスパーシーでホット。フレーバーからフィニッシュまでバランス良くまとまっています。TENの正しい延長線上にあるアードベッグらしいアードベッグだと思います。現在、ある程度熟成の進んだアードベッグを飲んでみたいなら選択肢の一つです。

しかしTENとの数倍の価格差を説明できるかというと、個人的にはやや悩ましい。他の蒸留所の18年クラスが7000円~12000円なのを考えると割高感は否めない。価格を考慮しなくて86点。価格も含めてトータルで商品価値を判断するともっとスコアは下がります。

アードベッグは熟成が進めば伸びる蒸留所だと思います。Whisky Baseでもハイスコアは長期熟成品ばかりで、最近の若いリリースはなかなか90点を超えていないです。至極同意。25年オーバーで数樽使ってバランスを取れば素晴らしいボトルが生まれるでしょうが、そんなボトルを手に入れるには現状ではそれなりの金を出すしかないです。アードベッグ蒸留所を所有するLVMH社のCEOベルナール・アルノーさん、死ぬまでに使い切れないほど金持ってんだから蒸留所の拡張工事とかしてくれませんかね?

当店が2002年に開業した頃にはモーレンジ傘下時代の30年を大量に売りました。木箱いっぱい捨てたなぁ。ここだけの話、仕入れは2万円でおつりが来ましたからね。最近、あまり感じることのないパフューム香ムンムンで香りだけで思わず顔がニヤけるほど素晴らしいボトルでした。香りを嗅いだお客さんに「これ本当にウイスキーなの?」ってよく言われたなぁ。記憶に残るほど美味かった1975も1杯1200円で売ってました。そりゃ瞬殺で無くなるわ。

当時を知らない人には「オッサンの懐古趣味で思い出補正されてるんじゃないの?」と思われそうですが、本当なんです。00年代に市場に出回っていたウイスキーは驚くほど美味しいスペシャルボトルが急がなくても簡単に安く手に入ったのです。経済学のマーケット理論のとおり、人気が無い時のほうが価格は下がるし、樽熟成というウイスキーならではの製法のため売れなくて熟成が進んだ美味しい原酒が市場に出回るのです。

アードベッグ30年の他にもよく覚えているのはDTボウモア34年1968と32年1969とか、DLブローラOMC29年1971やO&R32年1970、34年1970は特に凄かった。Lonachグレンリベット37年1968、35年1973、ブナハーブン40年1969。MMスプリングバンク34年1965。その他いっぱい。美味しいウイスキーを飲むと感動で涙が出るんですよ。信じられないかもしれませんが本当の話。しばらく泣いてないです。

00年代がスコッチがあまりにも安すぎたのですが、あのウイスキーを飲んで感動を覚えるほど宝の山だらけの時代を知る者からすると色々と思うことがあります。珍しいウイスキーじゃなくて美味しいウイスキーを飲みたいんです。老害でスンマセン。